長恨歌絵巻 トップへ
長恨歌絵巻(ちょうごんかえまき)について

【書誌】
 絵巻3軸。外題「長恨歌 上(中・下)」。表紙寸法、縦34.0糎、横28.1糎。全長、上巻1404.8糎、中巻1448.2糎、下巻1479.1糎。挿絵数、上巻6図、中巻5図、下巻7図。寛文延宝頃の製作。

【内容】
 万治・寛文頃(1658〜72)に刊行された『やうきひ物語』3冊(挿絵全15図)を粉本として奈良絵巻に仕立てたもの。『やうきひ物語』は浅井了意の作とされる。本作は題名こそ物語と称しているが、実は白楽天の著名な詩文『長恨歌』の注釈であり、粉本である版本には「長こん哥の抄」の題簽を有する本(愛知県立大学図書館蔵)もある。つまり本作品は抄物を絵巻化した珍しい作例と言え、新種の絵入り本を開拓していた江戸前期の絵巻制作の様相を知る好例となる。

【主要伝本】
 大阪大谷大学図書館本の他に、寛文延宝頃絵巻3軸(吉田幸一蔵)、寛文延宝頃絵巻3軸(九曜文庫蔵)、江戸前期絵巻3軸(中野幸一蔵)、江戸前期絵巻3軸(同蔵)などの絵巻が存し、奈良絵本としても作られている。

【参考文献】
 小林健二「『やうきひ物語』と『長恨歌絵巻』―江戸時代前期における絵巻製作の一様相―」(『大谷女子大国文』一六、昭和61年3月)、山崎誠「長恨歌抄と長恨歌絵巻」(『中世の知と学―〈注釈〉を読む』森話社、平成9年)。

小林健二 (元大阪大谷大学文学部 
日本語日本文学科教授)